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gallery bauhaus 10周年記念『プラハ年』特別展  第一弾

横山佳美写真展
Praha モノローグ


横山佳美写真
  ©Yoshimi Yokoyama

会 期 / 2016年4月20日(水)〜6月18日(土) 作家在廊日:4/20(水)〜23(土)、5/31(火)〜6/11(土)
時 間 / 11:00〜19:00
休 廊 / 日・月・祝
入場料 / 無料



内容紹介



プラハ在住の作者が2005年から2015年にかけて撮影した作品展。
作者が10年にわたって暮らす生活の場としてのプラハや、歴史に隠された日常的な風景や瞬間を、モノクローム・フィルムで切り取った作品。

モノクローム(ゼラチン・シルバー・プリント)作品49点を展示。


横山佳美写真
  ©Yoshimi Yokoyama


ギャラリー・トーク

横山佳美×飯沢耕太郎(写真評論家)


日  時 / 2016年4月23日(土) 19:00〜 (当日は18:00閉廊、18:30より受付開始)
参加費 / 2000円

終了いたしました。たくさんのご参加ありがとうございました。

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写真展に向けて

横山佳美

東京で駆け出しのカメラマンとしてスタートした私は5年たらずで音を上げて、チェコ国立芸術アカデミー(FAMU)写真学科・修士課程を目指しました。プラハを選んだ理由はスデクやクーデルカの写真が好きだったこと、キェシロフスキ(*注)監督のポーランド映画のなかで見た、団地のシーンがずっと心に残っていて、中東欧の生活を見てみたくなったことなどです。
2005年FAMUには一番の成績で入学しましたが、教室の中はやはり退屈でした。
2年間のプラハ留学という限られた時間において、私のテーマは旅行者ではない生活者になること、一日も早くプラハの人になることでした。
共産主義の残り香しか知らない私が、現代のプラハにいて写真を撮る意味はなにか。それは、共産主義のノスタルジーに浸ることでもなく、重厚で複雑な歴史を持つこの国の現代生活者として、平凡な日常をストレートに見ていくことで自ずと明らかになると思いました。
写真として結実する像が、自己表現も含めたすべての答えです。
プラハに来て10年あまり、日本人旅行者の視点は未だ私の中にあります。見るもの触れるもの、全てが新しく、あるいは気の遠くなるほど古く、そんな出会いの場面をプラハの内側から写真と言う形で外に送り出す、それが私のこの10年の仕事です。
コンセプトは特にありませんし、持ちたいとも思いません。自己の中に個性も創造性も求めてはいません。ただ、目の前で不断に展開される退屈な世界が、たまに見せてくれるむき出しの表情や愛らしさを写真に写すことができればいいのです。そのために私は、キェシロフスキ映画の中の団地の住人のように、アノニマスなプラハの住人でありたいと思います。

展覧会のプリントを重ねるごとに、プラハの街を鏡にした自分が想いだされます。そして、私がプラハの街に10年も暮らす事になった理由が分かる気もします。

*キェシロフスキ
世界的に著名なポーランドの映画監督(1941-1996)。代表作としては十戒をテーマにした「デカローグ」、フランスからの依頼で制作した「トリコロール三部作」など秀作多数。

横山佳美写真
  ©Yoshimi Yokoyama


横山佳美について

ヴラジミール・ビルグス

ほぼチェコ人の全員が日本製のカメラを持っています。そしてほとんどの人が最近まで日本製のフィルムを使用していました。しかしながら、ここ数年プラハで荒木経惟や東松照明の写真展が開催されたにもかかわらず、日本の写真そのものはまだあまり知られていないのが現状です。プラハにはそこに暮らして10年になる、日本とチェコの写真の架け橋のような写真家、横山佳美がいます。彼女自身こんなことを言います。「東京は私の愛するテリトリー、プラハは私の一番好きな街。私にとってはどの写真がどの街で撮られたかは重要ではありません。私にとって大切なことは、これら私の大切な場所にある、ひとつの共通したリアリティーのかけらを捉えること。」
早稲田大学教育学部英語英文学科を修業し、フリーのカメラマンとして経験をつんだ後、人生の偶然が思いも寄らない変更や決定をもたらすように、彼女もまた2005年、自分の写真の知識を深める為FAMUとして知られるチェコ国立芸術アカデミー映像学部写真学科に入学します。プラハにきた後、ヨーロッパの中心、このインスピレーション溢れる環境で自分の創造への大きな衝動を得ることになります。FAMUの写真学科で4ヶ月を過ごした後、オパヴァにあるシレジア大学に設置された写真インスティチュートに転校、信じられない早さでチェコ語を習得、また日本の文化とは大きく異なるその土地の習慣や伝統を吸収し他の生徒と垣根ない交流を深めます。授業や校外講習、写真フェスティヴァルへの参加行事のみならず、生徒の誕生日やお祝い事にいなかったことはありません。そしてそのいたるところで写真を撮ります。大学課程の中では、すべての必修科目の単位を修得し、また卒業論文(『日本60年代の写真について。』)を書き上げなくてはなりませんでした。
彼女のなかにある様々なテーマ、作品動機、スタイルのため、彼女のことを一言で言い表すのは簡単ではありません。表現性と「ボケ」のスタイルからは、現代において日本写真の古典と言える森山大道、奈良原一高、東松照明、またウィリアム・クライン、ロバート・フランクなどといったニューヨーク派写真家の影響が見られます。様々なモチーフの中に可視的なシンボルを見出す時には、ヨセフ・クーデルカ、ヴィクトル・コラージュ、ダニエル・シュペルル、ヴァーツラフ・ポデスタートなどといった、チェコの写真家の影響が見られます。日常に存在するリアリティーを見つめる彼女の目線は、いつも解読が容易というわけではない、人間関係や可視的なメタファーを包含する瞬間を捉えます。日本とチェコの文化間の相互関係に身を置く彼女の生活に類似して、彼女はリアリティーの影とかけらを使って、自分と被写体の間に横たわる相互関係や一致を探そうと試みます。彼女の写真はグレー部分を排した白黒のハイコントラストと粒子の粗い表現方法、またブレ・ボケの表現を使うことで独特なものとなっています。
都市風景の中で繰り広げられる決定的瞬間を、ただの記憶・記録の断片としてではなく、一般化された瞬間として捉えるということは、多くの写真を撮り、そしてそれを特定化するという作業を意味します。このデジタル時代においてはそれも達成容易なことかもしれません。しかしながら今でも横山佳美は、表面的効果しか持たない写真を拒否し、モノクロフィルムでの撮影、暗室での引き延ばし作業など、昔ながらのアナログ作業にこだわります。彼女にとってどの写真がどの街で撮影されたかということは重要なことではありません。もちろん文化のそれぞれ異なる、街特有の雰囲気や特徴を排除するわけではありません。ただ、現代社会の生活風景や人間関係に対する彼女の個人的なまなざし、また彼女自身の生活を映し出す一般化された瞬間により重きを置きます。自分自身を投影し、一枚一枚の写真から順々に広い全体像を展開する彼女の写真は、周囲を取り巻く世界の不確かさ、喜び、様々な感情を語りかけてきます。


ヴラジミール・ビルグス
1954年5月5日フリーデク-ミーステク・チェコスロヴァキア共和国出身。現代のチェコ共和国写真家、写真歴史家、大学教授博士。
1978年よりチェコ国立芸術アカデミー映像学部写真学科にて助手、1999年より教授に就任。1998年から2002年まで同写真学科にて、歴史と理論研究室を教授として率いる。1990年よりシレジア大学人文哲学科所属、写真インスティチュート学長。「プラハ写真家の家」役員会員。
また自らチェコを代表する写真家としてドイツ各都市、ロシアなど、ヨーロッパ圏を中心に50以上の個展歴を持つ。パリ国立図書館、サンフランシスコ現代美術館、また横浜美術館や東京都写真美術館など、国内外コレクション収蔵多数。チェコを代表する写真批評家、キュレーターとして広く活躍。著書「チェコ・アヴァンギャルド写真1918-1948」(仮題)、「20世紀のチェコ写真」(仮題)、「チェコ・ヌード写真」(仮題、共著)「1990年代のチェコ写真」(仮題・共著)などチェコの写真全体の流れを知る第一人者としてその著書(共著含む。)50冊を超える。
2010年に資生堂ギャラリーで開催された「暗がりのあかり―チェコ写真の現在展」に出品。
(チェコ写真界のドンとして、ヨセフ・スデク、フランティシェク・ドルチコルなどチェコ共和国を代表する写真家の展示を国内外で多数企画している。)

横山佳美写真
  ©Yoshimi Yokoyama


作家プロフィール


横山佳美(よこやまよしみ)

1975年鹿児島県生まれ。早稲田大学教育学部英語英文学科にて、文学学士修得。マガジンハウス・カメラアシスタントを経験後独立、1998年からファッション誌中心にフリーカメラマンとして働き始める。2005年チェコ共和国に留学、チェコ国立アカデミーFAMU写真学科修士課程入学、中退。チェコ共和国オパヴァ、シレジア大学クリエーティブ・フォトグラフィー・インスティチュート修学。
現在プラハ在住。

<展覧会>
2000年 個展「Berlin」新宿ニコンサロン 大阪ニコンサロン
2006年 個展「PIG;Q」MUDDUM プラハ
            個展「Tokio-Praha」Kino AERO プラハ
2007年 「60年代からの日本のドキュメンタリー写真について」セミナー(ダニエル・シュペルル氏と)
               ライカギャラリー プラハ
            個展「Divadlo-Tokio」スレジア劇場 オパヴァ市 チェコ
            二人展「Night in the Station」プラハ本駅
2009年 個展「Study for Attention」ギャラリーKino Kotva チェスケー・ブデェヨヴィツェ
           個展「Study for Attention」トゥルホヴェーソヴィニ
2011年 個展「Tokio-Praha」オスカル・ネドバラ劇場 ターボル市 チェコ
            個展「Tokio-Praha」ギャラリー7 オストラヴァ市 チェコ
            個展「Study for Attention」ブラティスラヴァ国際写真フェスティバル
               ブラチスラヴァ、スロヴァキア共和国
            個展「Tokio-Praha」チェコセンター東京
2012年 「60年代からの日本のドキュメンタリー写真について」セミナー
               フリーデック・ミースティック写真クラブ チェコ
2013年 個展「Tokio-Praha」写真フェスティバル ノヴェー・ムニェスト・ナド・メトゥイー市 チェコ
            個展「Tokio-Praha」ジュルター・ポノルカ・ギャラリー ズノイモ市 チェコ



gallery bauhaus 10th Anniversary
Praha
Yoshimi Yokoyama Photo Exhibition
April 20-June 18,2016
gallery bauhaus
2-19-14 Sotokanda, Chiyodaku, Tokyo, Japan
Access map
About 6 minutes walk from Ochanomizu station (JR line/Tokyo Metro Marunouchi line).



横山佳美写真
  ©Yoshimi Yokoyama