gallerybauhaus

井津由美子写真展
Yumiko Izu Photo Exhibition
Secret Garden


井津由美子写真 井津由美子写真
             ©Yumiko Izu

会 期 / 2014年5月21日(水)〜7月31日(木)
時 間 / 11:00〜19:00
休 廊 / 日・月・祝
入場料 / 無料


内容紹介


2003年より7年に渡り、花を撮影し制作した「Secret Garden」から国内初の写真展です。
「Secret Garden」は「Blanc」と「Noir」、白と黒の二つのシリーズで構成され、作品は全て8×10インチの大判カメラで撮影、プラチナ・プリントで制作されました。
対照的な二つのシリーズは、花そのものの美しさだけでなく、「生と死」、「光と闇」といった様々な二元的イメージを観るものに想起させます。
2010年には同シリーズが、マンハッタンのラルフ・ローレン本店にて展示され、また多くの作品が所蔵されています。

モノクローム(プラチナ・パラジウム・プリント)作品43点を展示。


ギャラリー・トーク開催!


【第一回】井津由美子×飯沢耕太郎(写真評論家)

飯沢耕太郎氏を聞き手にお招きし、「Secret Garden」シリーズやこれまでの制作などについてギャラリー・トークを行います。
日  時 / 2014年5月23日(金) 19:00〜 (当日は18:00閉廊、18:30より受付開始)
参加費 / 2,000円



【第二回】井津由美子×久保元幸
「ザ・プリンツ」代表の久保元幸氏をお招きし、プラチナ・プリント技法についてギャラリー・トークを行います。
日  時 / 2014年6月13日(金) 19:00〜 (当日は18:00閉廊、18:30より受付開始)
参加費 / 2,000円


久保元幸(くぼもとゆき)
1948年 東京生まれ
1990年 カスタムプリントラボ「有限会社ザ・プリンツ」設立
2006年 ライカ銀座店で「ライカプレミアムプリントサービス」提供
2009年 千葉大学大学院融合科学研究科客員教授
2012年 「株式会社アマナサルト」プリントディレクター就任
現在アマナサルトを通じてプラチナ・プリントおよび他のオルタナティブプロセスのプリント制作とワークショップを開催中。


mailもしくはお電話にて要予約。終了致しました。たくさんのご参加ありがとうございました。
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後日、スタッフより予約確認のmailをお送りさせて頂きます。

*お客様の個人情報を漏洩・流出させたり不正に利用したりしないよう、厳正な管理を実施しております。





井津由美子の闇と黄泉
    ――「シークレット・ガーデン」に寄せて


小手鞠るい

   出会いは「白」だった。
   ニューヨーク州ウッドストックの町はずれにあるアートギャラリーで、初めて井津由美子の作品を見たとき、私は、花たちの背景を流れる霧のような白に惹かれた。花を包み込む、というよりは、花を吸い込んでいるかのような、幽玄な白。もしかしたら、この写真家が撮ろうとしているのは、花ではなく白なのではないかとさえ思った。
   それから長い年月が過ぎて、写真家の暮らす湖畔のスタジオで「シークレット・ガーデン」の花たちに再会する機会に恵まれた私は、そこで初めて「黒」に出会った。
   静謐な黒。漆黒のビロードのような黒。井津由美子の真骨頂とも言える闇の色である。少し前に、動物たちの頭蓋骨を撮ったシリーズ「闇の彼方へ(Faraway)」に魅了されていた私はたちまち、この黒の虜になった。白と黒、すなわち、生と死が隣り合わせになって、ときには綯い交ぜになって咲いていてこそ、それこそが井津由美子の創り出す庭だったのだと、目から鱗が落ちるような思いを味わった。
   じっと見つめていると――この庭にたたずんでいると――私の目の前で、不思議な反転が起こった。黒に浮かび上がる花たちの、なんと妖艶で可憐で饒舌なこと。黒に優しく守られて、根を持たない花が、朽ちていこうとしている花が、生かされている。黒が花たちの「生」と、その最期の躍動をつかさどっているかのように。対する白の、ある種の恐怖にも似た、残酷なまでの美しさはどうだろう。限りなく「死」に近いこの白。白装束の白。漂白。白紙にもどす。潔癖で、純粋で、排他的な白。黒は、現世の艶めかしい闇の色。白は、死後の容赦ない無の色。
   黒と白が逆転し、生と死が入れ替わるのを目の当たりにして、私は悟った。この写真家の写し出す花々の「美」は、つかのまの生の輝きであると同時に、きたるべき死の息吹でもある。あるいは、こうも言えるだろうか。ここで咲いている花たちはどれも、誰もがいまだ目にしたことのない「魂」の化身なのであると。
   誰もが、生まれた瞬間から刻一刻、死へと向かってひた進んでゆく。生きている、ということはすなわち、死んでゆくことに、ほかならない。彼女の写真に私は、そんな私たちの行き着く先にある、安息の地であり、魂の隠れ処でもある、黄泉の世界を見る。
「だけど、だれにも言わないで。これは、あなたとわたしだけの秘密よ」
   ささやきかけてくる花たちに囲まれて、ひとたび迷い込んでしまったら、脱け出すことはできないし、抜け出したくなくなる。ここは、生と死が密約を交わした、シークレット・ガーデンなのである。

(こでまり るい  小説家)


小手鞠るい。1956年生まれ。81年にサンリオ「詩とメルヘン賞」、93年に「海燕」新人文学賞、05年に島清恋愛文学賞、09年にボローニャ国際児童図書賞を受賞。主な作品に『欲しいのは、あなただけ』『美しい心臓』『望月青果店』『永遠』『アップルソング』など。


作家プロフィール


井津由美子(いづゆみこ)

1968年  大阪生まれ
ニューヨーク在住
1998年カリフォルニア州にあるブルックス大学写真学科卒業。その後はニューヨークでジュエリーの広告写真からフォトグラファーのキャリアをスタート。
2003年より広告写真と平行して、8×10インチのカメラでプラチナ・プリント技法による「Secret Garden」シリーズを制作開始。
2007年ニューヨーク州ウッドストックセンター・フォー・フォトグラフィー奨学金受賞。サミュエル・ドースキー美術館に作品が収蔵される。 2010年「Secret Garden」から新作20点をマンハッタンのラルフ・ローレン本店にて展示。
2011年からは11×14インチの大判カメラで撮影した新シリーズ「Faraway(闇の彼方へ)」を制作開始。
2013年 東京Zeit Foto Salonにて個展「Faraway(闇の彼方へ)」開催。
2014年 東京gallery bauhausにてディアドルフを愛用する写真家10名による写真展「DEARDORFF」に出品。

Official Web Site http://www.yumikoizu.com/


Secret Garden
Yumiko Izu Photo Exhibition
May 21-July 31,2014
gallery bauhaus
2-19-14 Sotokanda, Chiyodaku, Tokyo, Japan
Access map
About 6 minutes walk from Ochanomizu station (JR line/Tokyo Metro Marunouchi line).